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7.気持ちのいい買い物って、なんだろう?

作成日:2014/03/17

ごぶさたしてます、ありまです。

突然ですが、わたくしの趣味(の一つ)は散歩です。
ベストコースは見知らぬ住宅街で、集合性・密集性が高いほどウキウキします。

ん?平日昼間に手ぶらでうろつく見知らぬ人間を、人は空き巣の下見と警戒するのではないかと思いますか? もちろん私も、そう懸念しました。ですから、失礼と怪しさのないよう細心の注意を払いながら、公道を(もしかしたら私道かもしれないが)歩き回るのです。

まれにですが、住宅街の中に突如、ムーディな店が立ち現れたりします。なんというよろこびの邂逅! で、さっそく入店すると、たちまち好きになっちゃうことがあるわけです。

  • 何がお気に入りかって?それは店主の熱を感じるからさ!

    私はぐるりやさんに、店主の“好きなものだけ集めましたよ!”というコレクター精神を感じ、そこが大変心地よいわけなのです。
    なにしろ、店内に所狭しと配置されたモノモノモノ、溢れんばかりのモノに、魅惑の香りと統一感とがプンプン漂います。

    もちろん、取扱い品はユーズドばかりですから、決して豪奢ではありません。用途不明品やジャンク品も数多く、人によっては何の価値も見いだせないでしょう。
    けれども、どれもこれも小奇麗に管理されていて、可愛がられている様子が垣間見える。 だから、取り扱われている商品たちには、貧乏臭さとかみすぼらしさとは無縁の 店主からの深い愛情を感じ取れる のであります。

  • まれにですよ

    人によってはリサイクルショップのことを、ただのガラクタ引き取り手と解釈することもあるようです。

    ぐるりやさんとても例外ではなく、そういう輩が買い取り希望で訪れた場面に出くわしたことがあります。
    私が目撃したそのおじさまは、自分の不用品を、とにかく売値を付けて手放したい感が満載でございました。 けれども、素っ気ない店長の対応から次第に敗色濃くなってきたおじさまは、とうとうタダでもいいからひきとらないか?と言い始めます。

    「結構いい品なんだよ~、状態もいいでしょ~?」
    店長のお断りに、なおも食い下がるおじさん。

    ウィンドーショッピングを装いながら聞き耳を立てるわたし。

    寺尾聰にヒッピー感を加味した風情の店長は、口調だけ聞くとかなり内気そうです。しゃべりかたも声も意外なほどソフトだし、このまま押し切られてしまうのか!?そう思った、次の瞬間!

    「うーん、でも、これ 好みじゃない んです」

    ワォ!なんという明解な辞退理由!

    そうです、ここの店長は、欲しいものしか引き取らないようです。
    そうして、店長の美学を尊重できない人からは、断固として(タダであっても)受け取らないのでしょう。

  • 私も一度、値切り交渉してぐさりとした経験が

    かくも常連気取りで語ってしまったわたしですが、実際にぐるりやさんで物を購入した履歴は、片手に数えるほどしかありません。もっぱら、見て楽しむ派です。あそこは、ミュージアムなのです。

    だがある日、とある哀愁漂うおきあがりこぼしを見た時、これは!!と思いました。
    しかしおやゆびほどのぽっちりの大きさのその人形、値札を見ると800円!た、たかい!財布のひもが固いわたくしとしては、かなり欲しいけれども定価で買うのは躊躇われた。






    ――こぼしとの最初の出会いから半年近くたったある日のこと。私は、店内に例のこぼしを再度発見。今こそ値切り時だ!と行動に踏み切りました。

    800円を600円にできないか?と問う私。すごく欲しいから、どうかぜひ、と懇願。すると店長、
    「そんなに欲しいのに…?800円、だめですか?」
    ぐぐ…、確かに。欲しいはずなのに、なぜだろうか定価ではどうしても買えない気分。
    だってこれ、どうみても、600円が適正価格じゃないですか?

    すると店長は仰いました。
    「安売りしたくないんですよ。だって、値切ると大事にしなくなるでしょ?」






    ga-nn···!

    ぐさりときました。まったくもって、店長の言うとおり。

    店長にとって800円のこぼしならば、私の目にどう映ろうが、その子には800円の価値がある!

  • ヒートアップする値下げ交渉

    私は交渉の最中、なんとしてでもこのこぼしを購入しなければ!!と、いつしか思いはじめていた。

    だって、ここまで店長に言わしめてから、万が一「値切ってくれないのなら、800円なら、買わないわ!」というお断り方をしたらどうなるか?値切り交渉の末にこぼしを手に入れることに成功したら、最後は雑に扱ったであろう自分を、逆説的に証明されてしまうような気がしませんか?

    かといって逆に、「そうですね、では800円で」と言っても、こぼしに800円の価値を見出しながらも価値未満の600円で買い叩こうとした、こぼしの価値を踏みにじろうとした自分を認めたことになりませんか?

    え?どうでもいいですか?皆様にとってはそうでしょうが、わたしにとっては一大事だったわけです。
    職人が丹精込めた民芸品をめぐる、持ち主と購入希望者との駆け引き。

    おわかりでしょうか?東京都品川区の片すみで、ひとつの美術品を巡る激しいドラマがあったわけです。

  • 結局、おきあがりこぼしは誰の手に?

    最終的には、かねてより目を付けていたアート系書籍との抱き合わせ購入による値下げが成立したのですが、 今思い返すと、物の価値を理解しているすばらしい人柄の店長を困らせて値切った私は、未熟者でした。

    「あなたが800円と感じ、大事にする品をお引受けするわけですから、800円お支払致します」と、どうして素直に言えなかったものか。

    それゆえ気にかかるのは、
    交渉の最中、別の目的が芽生えはしなかったか?
    自分の正当化のために、わたしはこぼしを利用したのではなかったか?
    という疑念です。

    わたしはこぼしに、真に誠実であったと誓えるのか?
    こぼしに一切の罪悪感を感じていないと、言えるのか?

    …いや、正直ちょっと感じてる。ごめんよ、こぼし。

    とはいえ、このこぼしが大事な子であることは、間違いありません。

  • これだけ私の中でこのこぼしの評価価値が高まったのも

    多分わたしは、もつれる交渉の末に、店長のこぼしへの愛をすっかりそのまま引き継いだわけですよ。

    今も赤いおきあがりこぼしちゃんは、玄関の大事なお飾りの一つです。
    うーん、こんなに、あいくるしい! koboshi







    そういえば本日は、マブダチCちゃんのお誕生日。Cちゃん、お誕生日、おめでとう。

    それでは、また次回お会いしましょう。





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